早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 無機化学部門 菅原研究室

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 化学は,様々な材料を作り出すことで私たちの生活を支えており,これまでになかった材料がテクノロジーの進歩をもたらし,テクノロジーの進歩によりライフスタイルも変わっていきます.菅原研究室では,有機-無機ハイブリッド(あるいは無機-有機ハイブリッドともよばれます)を研究対象として,新材料を創り出すことに取り組んでいます.

優れた有機-無機ハイブリッド材料を創り出すために

 ハイブリッドは雑種などが本来の意味ですが,科学・技術の領域では,二つ以上の技術が活用された製品,混成部品から作られた機械などの意味で使われています(“ハイブリッドカー”は代表例です).特に材料化学の分野では,2つ以上の成分を複合化した材料に使われることが多く,その代表が有機-無機ハイブリッドです.無機材料,有機材料ともに様々なところで活用されており,現在も広く研究開発が行われていますが,有機材料及び無機材料にはそれぞれ限界があることから,有機材料と無機材料の性質をあわせ持ちえる有機-無機ハイブリッドが“次世代の材料”として期待されています.その組み合わせは無限であり,数限りない新材料を生み出すことが可能となります. それでは有機-無機ハイブリッド材料の性質は有機成分と無機成分の性質を足し合わせることだけにより決まるのでしょうか?様々なファクターの中で,無機成分と有機成分がそれぞれどのような大きさなのか,また無機成分と有機成分の界面がどのようになっているかにより,有機-無機ハイブリッドの性質は大きく異なります.従って,これらを制御する有機-無機ハイブリッドを作製する技術が,優れた有機-無機ハイブリッドを創り出すための鍵を握ることになります.

有機-無機ハイブリッド材料へのアプローチ

 現在菅原研究室では主に2つのアプローチで有機-無機ハイブリッド材料を作製しています. 無機ナノ構造を利用した有機-無機ハイブリッド材料 無機ナノ構造を利用し,その表面に有機基を導入する手法を研究しています.無機ナノ構造としては主に酸化物ナノ粒子と酸化物ナノシートを用い,有機分子や高分子鎖を無機ナノ構造の表面に共有結合で固定化しています.必要に応じて,有機化学的手法で結合させる有機分子を合成したり,表面に固定化した官能基から高分子鎖を成長させたりしています.酸化物表面と有機基の間は主に金属-酸素-リン結合を用いています.得られる有機修飾ナノ構造を,有機-無機ハイブリッドとして単独で用いる場合もありますが,これらを高分子マトリクス中に埋め込んだ有機-無機ハイブリッドへも展開しています. ボトムアッププロセスを利用した有機-無機ハイブリッド材料 ジホスホン酸など複数の-P(O)(OH)2基を有する化合物を用い,金属化合物との反応により有機-無機ハイブリッド材料を作製しています.例えばジホスホン酸 (OH)2(O)P-R-P(O)(OH)2を用いる場合,R基に機能を持たせることで機能性有機-無機ハイブリッドへの展開が可能となります.金属化合物としては金属塩化物などを用い,金属-酸素-リン結合によりネットワークを形成させています.

有機-無機ハイブリッドからの無機材料作製

 上記とは全く異なる有機-無機ハイブリッドの活用法として,セラミックス前駆体としての利用があります.セラミックスは粉を焼き固める“焼結”と呼ばれる方法で一般に作製されますが,この方法では作製できる形状は限定されてしまいます.有機-無機ハイブリッドの中でも,無機高分子に分類される化合物は,基本的には高分子としての性質を持ちますが,高い温度での熱処理や加水分解反応により有機成分を取り除けるように分子構造を設計することにより,最終的に無機成分だけをセラミックスとして得ることができます.従って,高分子である“前駆体”を用いて様々な形を作り出し,これを熱分解するプロセスにより,“焼結”からは得られない薄膜やファイバーなどを得ることができます.また,比較的低温で熱処理して得られた非晶質物質を前駆体として用い,高温高圧処理を行うことによりハードマテリアルとよばれる超硬質セラミックス材料を合成しています.

研究に関する考え方

  • ターゲットとしている機能性材料を作製するために,必要に応じて合成技術を組み合わせて用いています.その手法には無機合成化学分野の合成技術だけでなく,有機合成化学分野,有機金属化学分野,高分子化学分野の合成技術も含まれます.分野の壁にとらわれず,様々な合成技術をシームレスに利用することが重要と考えています.
  • 作製した材料のキャラクタリゼーションが重要と考えています.そこで,様々な分析技術を駆使し,材料の構造や機能を明らかにすることに重点を置いて研究を展開しています. 学内での分析機器を用いたキャラクタリゼーションで不十分な場合は,学外の専門家と連携してキャラクタリゼーションを行っています.
  • 菅原研究室の研究活動は材料合成とキャラクタリゼーションに特化し,作製した材料の機能を明らかにするために,学会や産業界の研究グループとコラボレーションをしています.見出した機能は,キャラクタリゼーションによって明らにした構造に基づき議論し,さらに優れた機能を示す材料の設計に繋げたいと考えています.また,こうした研究者との連携を通して社会が求めている材料を知り,社会実装に向けた材料の開発を目指して研究を展開したいと考えています.

菅原教授のインタビュー